(笑)

雑誌などによくある座談会記事で欠かせないのが「(笑)」という記号だ。 それは発言者あるいは場の全員が、その部分で笑ったことを表している。 座談会記事を音読するとき(そんなことを実際にするわけじゃないが)、そこで笑えばよいということだ。 これは、座談会の対話の雰囲気をよりリアルに表現するということでは意味のある記号だといえる。

BBS を始めて大量のアーティクルを読むようになったとき、その文章で目についたのがこの「(笑)」という記号だった。 アーティクルは座談会とは違うから、「(笑)」の記号には別の意味がある。 つまり筆者が文章のその部分で笑っている、もしくは読者にその部分で笑ってほしいと期待していることを示している。 これには、ときにはきつくなりがちな文章を、冗談やウイットを含んでいるのだと意思表示することによって柔らかくする役目がある。 僕自身も、「(笑)」という記号は使わなかったが、「…なんですよね(わはは)」のように笑い声を入れるという方法で同じようなことをしていた。 まあこれは、BBS という不特定多数の中での円滑なコミュニケーションを助ける智恵と言えなくもない。 もっともこれが行き過ぎて、「(爆笑)」「(爆)」「(核爆)」のようにエスカレートしていき、初めて見る人には通じないというコミュニケーション不全を引き起こしているのだが。

そして最近、座談会でもなんでもない普通の雑誌記事や書籍の文章の中に、この「(笑)」が混ざってきているようである。 BBS のような場では、まあ許せなくもなかった「(笑)」だが、普通の記事に使われると、なにやら異様な印象を受ける。 なにやら、つまらない文章の端々で、「ここで笑いなさい」と指示されているようなのだ。 BBS はシロウトの書き手が口語的な文章でお遊び的につきあって成り立っているから、表現能力を補うためにも「(笑)」という記号を使うのは賢いことだと思う。 しかし書籍や雑誌の記事でそれを読まされると、筆者の作文能力に問題があると感じないではいられない。 つまり、「(笑)」という記号に頼ることなく、意志や主張を誤解なく伝えられるだけの作文能力がないということの現れのように見えるのだ。

それはどうやら、文語の書けない人が増えているということが原因のように思える。 文語には文語固有の言い回しがあるし、口語には文章には使えない言い回しがある。 言葉だけではなく、文章の構造だってそうだ。 文語をそのまま口に出して読むとひどく不自然だが、口語をそのまま文章にしてもやはり不自然なのだ。 そういうことを理解していない人が、最近多くなってきたようだ。 まあ、文語も時代に合わせて変化しているということなのだろうが、それにしたって読みづらくなってしまうのは困る。 特にホームページに載せるような文章は、文語と口語の視点できちんと清書してほしいよなあと思う今日このごろなのだった。

ところで「(笑)」って「わらい」と読むのが正しいのだろうか。 それとも「しょう」かな?

Aug-31-1997


[prev] / [next]
[back to index]