オリジナリティ

たしかレベッカというバンドが登場したのは高校1年か2年の頃だったと思う。 同級や先輩たちの中にファンがいて、結構話題にのぼっていたのを覚えている。 僕はすでに洋楽しか聞かないようになっていたが、なにしろレベッカの人気はすごかったので、いくつか聞いたこともあった。 が、僕はレベッカは大嫌いだ。 というのも当時の彼らのヒット曲 ラブ・イズ・キャッシュ が、Madonna の Material Girl とそっくりだったからだ。 メロディーはほとんど同じ、歌詞の内容もだいたい似たような感じであった。 たとえばこれが西城秀樹の ヤングマン のようなカバーだというなら別にいいのだが、ちゃんとこの曲には日本人の作者がいて、Madonna の名前はどこにもクレジットされていないのだ。 単なるパクリバンドじゃないの、というメガネでみると、レベッカの NOKKO 自身も、どうも Madonna のマネ臭い感じが漂っていてどうしても好きになれなかった。 その後レベッカはオリジナルのいい曲をたくさん出しているが、僕は一枚も買ったことがない。

似たような理由で嫌いな歌手やバンドはいっぱいある。 たとえばドリカムは Fairground Attraction に似ててだめとか、 遊佐未森は Kate Bush と歌い方がそっくりとか、そういうのだ(とはいえ遊佐未森のファンではあるのだが)。 もちろん似ているとかそっくりとかいうのは僕の個人的な印象なので、本当のところはどうだか知らない。 が、とにかくそれが理由で嫌いになってしまったので、その後いくらオリジナルですごい曲を作っても、やっぱり嫌いってことになってしまう。 なかでも一番嫌いなのが、パフィーである。 あれはどうやら確信犯的に古い曲をモチーフにしているらしいのだが、それにしたってひどすぎる。 引用とかオマージュというのは、聞き手もオリジナルを知っているときに有効な手段だと思うのだが、パフィーのファンは Beatles も Beach Boys も知らないと思う。 それどころかパフィーの2人も知らないんじゃないかと思う。 そりゃ Let It Be ぐらいは知っていると思うが、Paperback Writer は知らないだろう。 そんなので「参考にしました」とかいうのは、あまりにもあざとすぎる。 そんなにオリジナルを愛しているなら、最初からオリジナルを聞いていればいいのだ。 パクられるほど人気があるのだというのもよくある言い訳だが、 あんな粗悪なコピーじゃあオリジナルを貶めているとしか思えない。

ゲーム業界にも似たような話はいっぱいある。 パラッパ・ラッパー から始まって、ビートマニア で爆発したリズムゲー(っていうのかな? よくしらないが)はすごい勢いでコピー商品を作り出している。 このラインで真に創造的と言えるのは、最初の パラッパ と、ゲーセンであそこまで勢力を拡大した ビーマニ までで、後は全部外道だと思う (DDR もある意味エポックメイキングと言えるかも)。 ちょっとマニアックな線だと、トルネコの大冒険rogue のパクリというのもある。 普通の人は rogue を知らないと思ったのか、トルネコ のプロデューサは 「これまでにない斬新なゲームシステム」と発言したそうだ。 そういうわけで僕は トルネコ も大嫌いだ。 まあゲーム業界は2匹目のドジョウ、というか10匹目、100匹目を狙うのが当たり前で、 インベーダー から続くシューティングゲームとか、ドラクエ から続く RPG とか、ジャンルができてしまうぐらいだからどうでもいいとは思うのだが。

真にオリジナルなものが存在するのか、という疑問があるのは分かる。 どんな作品にしても、何らかの形で過去の作品に立脚していなければ、お客に受け入れてもらえないからだ。 たとえばプログレのようなジャンルはあまりにも突飛すぎてメジャーには成り得ないし、 「日本語ではオリジナルな作品は書けない、じゃあ言語を創造してそれで小説を書こう」ということで出来た作品を読む人がいるとは思えない。 結局、過去の作品にどれぐらい新規性を加えられるか、さじ加減で決まるのではないかと思う。 そのさじ加減の絶妙さが、作品を楽しむ上でのポイントだと思うのだ。

さて本題(やっとかい)。 ここ数週間、風邪をひいて家に閉じこもる生活が続いていたのだが、やることがないのでテレビをずっと見て過ごしていた。 普段見ないドラマなどもちょっと見てみたのだが、たまたま 君といた未来のために というのを初回から見ることができた。 が、それが Ken Grimwood の リプレイ の完全なパクリなのである。 細かい設定の違いはあるものの、大まかなストーリーは完全に同じだ。 しかしオリジナルのいいところがいくつかなくなっていたり、変な矛盾点も入り込んでいるようだ。 なかでも驚いたのが、Grimwood の名前がどこにもでてこないことだ。 これほどあからさまなパクリでもクレジットされないのって、テレビでは普通なのだろうか? とても信じられない話だが、まあ リプレイ を読んだことがない KinKi Kids ファンには関係ないのだろう。

いうまでもないが、リプレイ は折り紙つきのオモシロ小説だ。 読んでみて、テレビの脚本がどれほどひどいか比べてみよう!

Jan-27-1999


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