アンダーライン

Web の世界では、ウゲッと思うようなスタイルが流行することがよくある。 たとえばフレームの多用(悪用)とか、強制 BGM (デフォルトで ON になってるやつ)とか「二度と見てくれるなって意味かな?」と思えるようなやつだ。 いちいち相手にするのは面倒だし、どうせ二度と見ないページだからと、最近はそういうのに口を出さないようにしていたのだが、最近多くのページでゲロゲロッというスタイルが目だってきてしまった。 リンクのアンダーラインを消しているページだ。

以前、インターフェース というページで、 進んだデザインには「どうしても押さずにはいられない形」「何だか引きたくなってしまう形」というのがあると書いた。 アンカーについていたアンダーラインは、まさに「押すべき存在」をアピールする重要な特徴なのである。 このような性質は、Web ブラウザが登場して以来引き継がれてきたデザイン上のスタンダードだった(はずだ。最初の Mosaic がどうだったかよく覚えてないが)。 net-surfer なら誰でもその意味を理解し、使いこなしてきたはずである。 良かれ悪しかれ、頭の中には「アンダーラインは押せるものだ」という回路ができてしまっているのだ。 だからアンダーラインのないアンカーに出食わすと、それをリンクと認識できないのである。 トイレに入って手を洗おうとしたら、見たこともない奇妙な蛇口が付いていたというような話だ。 これはひどく深刻な問題だ。

アンダーラインというものが、ビジュアルデザイン上ダサいシロモノであるということは、僕も認めるにやぶさかでない。 しかし使い勝手を犠牲にするほど重要な意味があるとは思っていない。 だが、ビジュアルデザインを優先する人は、インターフェースとしてのデザインを軽視する場合が多い。 というか、そもそもインターフェースなんて知りもしなければ、使い勝手の善し悪しなんて考えたこともないことが多い。 自分の美的センスさえ満たせば、他人がそれを見てどう思うかなんて気にしないのである。 たとえばアンダーラインを消す連中に「分かりづらいんじゃないの」と問いかけてみると、マウスカーソルを乗せると指のアイコンに変わるから、それでリンクと分かるじゃないかと言われてしまう。 たしかにそれはその通りだ ── 本文を丁寧にマウスカーソルで追いかけていけば。 あるいは「これリンクかな?」と宝探し気分でさぐっていけば。 だが net-surf しててそんなことするだろうか? それよりは、ぱっと見た目にリンクだと分かる方がいいんじゃないか? アンカーが分かりにくいならば、それは単に見落とされるだけだ。 その先にどんなに素晴らしいページがあっても、読んでもらえないのである。 それどころか、積極的に次のページを探したいときも、どこにあるのかいちいちカーソルを当ててみないと分からないとあっては、読む気が失せてしまう。 ページを魅力的に見せようとする努力で、読者に不便を強いるなんて、滑稽としかいいようがない。

しかし、アンダーラインを消すページは確実に増えてきている。 友人・知人の個人ページはもちろん、ZDNN のようなメジャーでさえリニューアルのときにアンダーラインを消してしまった。 あれでは初めて訪れる人の中には、個々の記事がリンクになっていて読めるんだということに気づかないまま終ってしまう人もいるんじゃないかと思う。 少なくとも僕にとっては、ぱっと見たとき「あー押せるリンクはひとつもないな」という印象を受けてしまう。

今後この勢いが衰えないとなれば、Style Sheet オプションは切ってしまうしかなさそうだ。 line-height だけはないと困るんだけどなあ。 まったくもう。

Jun-15-1999


[prev] / [next]
[back to index]