著作権

著作権法の原文はここにあるので、まずそれを読んでみることをお勧めする。 はっきりいって法律文書なんて読みづらくて読んでいられないものなのだが…。

著作権は、著作物を作った人 --- 著作者 --- に対していろいろな権利を与えましょう、という作りになっている。 一部を列挙すると、公表権、氏名公示権、同一性保持権、複製権、譲渡権、貸与権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利、などがある。 著作者はこれらの権利を活用することで、対価を受け取ったりニセモノを制限したりすることができるわけである。 これらの権利を与えることによって、著作者を保護し、著作物が正当な評価を得られるようにして、文化の発展に貢献するというのが目的となっている。

たとえば複製権とは、著作物を複製する権利のことである。 著作者はこの権利を専有している。 これは他人が勝手にコピーを作ることを禁じるばかりか、 著作者自身がそうと決めれば複製をひとつも作らないことさえ可能にする。 また譲渡権は、著作物を人に与える権利である。 与える著作物は原作品でも、複製したものでも構わない。 著作物を人に与えることができるのは、著作者のみということなのだ。 だいたいにおいて著作者は、自分の著作物を自由に扱うことができる。 また他人からの干渉を避け、自分の権利と著作物を守ることができるようになっている。

ちょっと具体例を示そう。 本を書いて出版すると、印税がもらえる。 これは著作物の複製を本として販売する権利を出版社に与える代わりに、 売れた本に対する対価として支払われるものである。 この取り決めは普通契約によって成されるので、他に付帯条件がつくこともしばしばだ。 たとえば発行部数は出版社が決めるとかである。 そうした条件に合意の上で、著作者は複製と頒布の権利を出版社に与えるわけだ。 この契約がないと、著作物は勝手に印刷したり販売したりできない。 このような契約は、本に限らず音楽(CD)などでも同様だ。
このような報酬をなぜ印税というかはよく知らないが、印紙税が縮まってできたらしい。 昔の本には、1冊ずつ著作者の検印が押してあったものであるが、 それが著作者の許可を表す印紙であり、 それこそが著作者に支払われる対価の根拠であったようである。 現代の本では検印省略とか、あるいはまったく押されていない。

一方で、著作権には制限もある。 たとえば、私的使用のための複製、図書館等における複製、引用、営利を目的としない上演等、時事の事件の報道のための利用、などがある。 それぞれに定められた条件を満たせば、著作権にとらわれず著作物を利用することができるのだ。

私的利用のための複製というのは、正当な方法で入手した著作物は、好きなように複製が作れ、利用できるという意味だ。 この制限があるからこそ、買ってきたCDをテープやMOにダビングして聞くことができるのである。 ただし肝心なのは、私的利用のためだけに限られるということだ。 私的利用の範囲は、個人または家庭内と決められていて、 それ以外の人に渡すと譲渡権の侵害になる。

営利を目的としない上演等、というのはちょっと難しい。 よく営利目的でないからコピーOK、という言い訳を聞くが、 たぶんこの条項を根拠にしていると思われる。 だがここでは「上演等」としてあるだけで、 複製や譲渡については明記されていない。 だからおそらく、非営利で勝手に公開したり配布したりするのはアウトである。 実際、本来有料の著作物を無料で勝手にばら撒くと、 本来得られたはずの利益を著作者に弁償しなければならないことになる。 これは複製権や譲渡権を侵害し、著作者の権利が侵害されたと認められたからに他ならない。
この件について脱線すると、彼氏彼女の事情で作中公開された劇について、 作者が「文化祭などでの公演は許可取ってくれないと」とコメントを出したことがあるのだが、 これは営利を目的としない上演と見なせるのではないかと思う。 まあ礼儀作法として連絡ぐらい入れるべきではあると思うが、 何らかの理由で作者が上演を差し止められるかというと、それは無理ってことになるのではないか。

Webでは、よくファンサイトというものを見かける。 お気に入りの作家や歌手のファンが、 さまざまな情報を集めて作ったWebページだ。 こういうサイトにおいて常に付きまとうのが、そのお気に入りの作家を紹介するために、 作品自体をWebに掲載するという問題である。 作品のすばらしさを伝えるには、何はともあれ作品を見てもらうのが一番いい。 だが作品を公開する権利は著作者にあり、ファンサイトといえども許可を得なければ勝手に行うことはできないのだ。 ここでファンサイト側には葛藤が生じる。 すんなり許可が得られればいいが、得てして許可してもらえないのが実情だからだ。 これは、著作物の譲渡権が、印税のところで説明したように、出版社などにおいて契約に基づき販売されているため、著作者のみならず出版社の許可が必要になるからである。 作品を十分に説明できないと、作品をよく知らない人には魅力のないページになってしまう。 その結果、ファン同士が馴れ合うだけのコミュニティサイトで終わってしまうことになる。 かといって、許可なく作品を掲載してしまうわけにもいかない。 著作者側に訴えられたら、確実に負けてしまうからだ。 引用の条項でがんばる手もあるが、条件が厳しいのでファンサイトでは難しい。 このようにファンサイトは、 コンテンツが充実するほど消滅の危険に近づくことになるのだ。

最近では著作者や出版社にも理解が生まれ、 作品引用のガイドラインを作っているケースもある。 またファンを大切にするという立場から、あえて摘発しないことを選択する人・会社もある。 だが一方でめったやたらに権利を振り回し、 ファンと喧嘩する作家もいないわけではない。

僕自身は、ご覧の通り著作物をWebを通じて公開している。 過去には、いわゆるフリーソフトウェアを作ってばらまいていたこともある。 これらはすべて無料配布で、僕自身は読者や利用者から報酬をもらったことがない。 昔、本を書いて売ったこともあり、印税をもらった経験もあるが、 だいたいにおいて僕自身の著作物は、無料で公開されているものばかりである。 これらについては、自由に複製したり譲渡したりしてもらって構わないし、 いちいち出典を示すことも要求していない (かえって検討するのが面倒なので、要求されると拒否したくなる)。 まだそういうケースは発見できないが、 他人が僕の著作物を自分のものと偽って公表するなんてこともOKである。 それはそれで面白いかな、なんてね。 ただ、著作権法上、著作物の著作者であることは辞められないことになっている (第五十九条)。 だからここで「訴えない」と約束しても、それを保証するために権利を放棄することができない。 ただ行使しないことを約束するだけである。

だれも僕を信用してくれてない…ってことかな?

Oct-12-2002


[prev] / [next]
[back to index]