嘘をつく者(その1)

むかし、ある村に、嘘ばかりついている少年がいました。 彼は「オオカミが来たぞ」と嘘を言うのが好きでした。 羊飼いは大慌てで飛び出してくるし、子供はみな家に逃げ帰ってしまうし、とにかく大騒ぎになるのです。 少年はそれを見て楽しんでいました。
ある日、少年は本物のオオカミを見ました。 それは恐ろしく大きく、凶暴なオオカミでした。 少年は大慌てで村に帰り、皆にふれて回りました。

「オオカミが来たぞ! オオカミが来たぞ!」

しかし、誰も信用するものはいませんでした。 少年は声を枯らすほど努力しましたが、誰も信用してはくれませんでした。

少年は逃げました。 オオカミは村にやってきて、人々をことごとく襲いました。 助かったのは、逃げた少年だけでした。

おわり


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