キートップ

キーボードの掃除をしたあと、キートップを元に戻したとき、 間違って入れ替えてしまったキーがあるのに3カ月ぐらい気づかなかったことがあった。 パスワードか何かを入れようとして、たまたま手元を見たときにうまく入らず、 あれっと思って確認したら間違っていたのだ。 そのとき最初に思ったのが「全部違った位置に変えちゃうと面白いかな」 ということだった。 ただ記号については自信のないところもあるので、さすがにそれはやめておいた。 次に思いついたのが「全部真っ白だったら、戻す位置を気にせずに済んでいいよな」 ということだった。 全部白かったら、記号も本気で覚えるかもしれん、と思った。

当時使っていたキーボードは、Gateway の大きいやつ(名前忘れた)だった。 最初に買ったAT互換機ということもあり、 柔らかなタッチが手に馴染んでいたので手放せなくなっていたものだ。 できればそれを真っ白にしたいが、Gateway にそんな商品はあるはずがない。 そこでショップで聞いてみたところ、 市販のキーボードでは「真っ白」というものは存在しなかった。 店員に相談してみたら、 「メンテ部品でプリントのないキートップがあるから、 それを買ったら?」と言われた。 しかしフルキー全部を注文するとすごい値段になってしまう。 「文字のプリントは擦ると消えるから消して使えば?」と言われた。 そこまでして消すのもナニかな、と思って実行はしなかった。 だいたい、キーボードを変えるというのは日常生活において引っ越しをするのと同じぐらいインパクトのある話である。 そう簡単にはいかないし、ただ白ければいいってんで、いい加減なキーボードを使うわけにもいかない。 まあしょうもない思いつきの話しだし、せいぜい友達に 「真っ白なキーボードがあこがれ」とジョークの種にする程度で済ませていた。

ところが1999年のこと。 このジョークを真に受けて、誕生日にプレゼントしてくれるという人が現れた。 友達でもあり、社長でもある ryo だ。 しかも本体は PFU の HHK だという。 どうやって手配したのか聞いてみたら、こういう話だった。

ryo も僕と同じようにあちこち問い合わせ、 しまいにはキーボードメーカーにまで尋ねて白いキーボードが作れるか調べていた。 だがやはりフルキー分のメンテ部品の入手は困難だし、 仮に真っ白なキーボードを発注して買うとしても1000個以上からじゃないと受け付けられないという。 何社か当たって、最後にいきついたのが PFU だったのだ。 ryo が白いキーボードが欲しいというと、先方の担当は 「何に使うんですか?」と尋ねたそうだ。 好事家の友達にプレゼントするんです、とは言えなかった彼は 「社員のタッチタイプ教育用に2セットぐらい欲しい」と答えた。 すると PFU は「それはおもしろそうですから10セットぐらい作ってみましょう。 2セットは本体を買ってくれればオマケで付けます」と言ってくれたのである。 というわけで、HHK 本体とフルセットの白いキートップを頂いたのだ。

こうして手に入れたキーボードは、確かにすばらしいものだった。 なにしろ HHK はタッチにこだわって作られた高級品だ。 慣れればすばらしいキーボードであることは間違いない。 記号配置も ASCII 配列なので申し分ない。 ただひとつ問題があるとすれば、矢印や HOME、END、DELETE キーが Fn キー割り当てになっているということだった。 これは完全に HHK 独自配置なので、新しく憶えなければならない。 完全にマスターするのに1ヶ月ぐらいはかかったように思う。

実際に使ってみて判るのは、ホームポジションから指が離れると1文字も打てなくなるということだった。 席を立っているとき、ちょっと2、3文字押すだけというときも、 きちんとホームポジションに指を置かないとだめなのだ。 基本的にタッチタイプは文章のように滑らかに入力できるものでないと役に立たないので、 ゲームする場合にも不向きである。 NetHack ならできるが、他のアクションゲームだとどうしても手元を見ないとできない。 それから職場で使っていて困ったのが、他人に端末を貸すときだった。 パスワードを打ってもらおうとキーボードを向けると、 困った顔をされてしまうのである。 これまで十数人にばつの悪い思いをさせてしまっているのだが、 唯一困らずに使えたのは、 NSI のバスキンさん だけだった。

入手した2セットのうち、1セットは ryo 本人が使っていたが、 やはり無理があるということでキートップは我が家に来た。 今は職場と自宅両方で、真っ白なHHKを使っている。 Slashdot で聞いた話では、PFU はこの直後アキバで限定発売したそうで、 同じ白い HHK を持っている人も何人かいるそうだ。 今年、PFU は HHK の新型を発表したが、 限定100セットで真っ白版を作ったところ、あっというまに売り切れたというニュースが流れた。 そのうち普通に売り出されるんじゃなかろうか、 ジョークのタネがひとつ減って困るなあ、 と思う今日この頃である。

Mar-12-2003


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