ことば

もう解散しちゃった Fairground Attraction というバンドに、A Smile in a Whisper という曲がある。 ちょっと引いてみると、こんな感じだ。

世界中の本に載っている
すべての言葉やすべての文字
それは音や名前を表しているだけで
他人と話をするだけの役にしか立たない
言葉では愛は語り尽くせない
ささやくような微笑みにはかなわない

実を言えば、コミュニケーションの道具としては、言葉以上に能率のよいものは他にないと僕は思っている。 が、もちろん場合によっては、言葉以外の手法が言葉以上に雄弁であることも、認めないわけじゃない。 現に僕はこの曲が大好きだ。 が、それでもこの歌が言葉で歌われることに対する矛盾を感じないわけじゃない。 たぶん、僕には言葉以外のそういうやり方は向いていない。

自分の気持ちを言葉を使わずに表すとしたら? いや、一言も言葉を発せずに、ということじゃない。 ずばりその言葉を使わずにすますとすれば、どうすればいいか? 最初に考えるのは態度で示すということだ。 だが、そういうのってむなしい結果に終わることが多い。 自分が気持ちを込めて相手に接しているとき、その気持が強いほど、相手にそれを無視されたり理解されなかったりしたときの反動が大きいのだ。 それならいっそのこと言葉にしてしまったらいいのに、と思うこともある。 でも、そんなことをするぐらいだったら、もうあきらめて嫌いになった方がいい。 散々いやな目にあった後では、そういう気持ちにならざるを得ない。

相手に合わせて自分を変える方が、相手に変わってもらうよりずっと楽にできる。 自分をコントロールするのは、とても簡単だからだ。 でも、それにしたって限度というものがある。 自分にだって、変えられない一線というものがある。 それを犠牲にしてもいいほど、相手のことが大切かと自分に問うてみると、そんなことはないよね、ってことになる。 じゃあ相手を変える方向に切り替えたらどうか? いや、そのときにはもう手遅れなのだ。 もうあきらめて、嫌いになってしまっている。 散々いやな目にあった後では、そういう気持ちにならざるを得ない。

Mar-27-1999


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