誤変換

先日読んだ本に「ハー・ディスク・ドドライブ」という誤植があって思わずうなってしまった。 これは翻訳本なのだが、おそらく hard-drive を「ハードドライブ」と直訳して、後で「ハード・ディスク・ドライブ」に直そうとして失敗したに違いない。 この修正の失敗具合が、いかにもワープロでやったように見えるのだ。

日本語ワープロが登場してからというもの、さまざまな出版物に誤変換が原因と思われる誤字脱字が増えている。 誤字脱字は昔からあったが、ワープロが普及し始めたと思われる時期に呼応して、手書きだったら間違えそうにもないような、ひどくつまらない間違いが増えているように感じるのだ。 早くから編集の電子化を押し進めてきた朝日新聞などは、 この種のかな漢字変換にまつわる間違いを記事のネタにしたり、 昔から校正のシンボルとも言えた「赤エンピツ」という表現をやめて、 「変換キー」などという欄を作るまでになった (もっとも昔あった「赤鉛筆」のコラムと違い、 「変換キー」は別にワープロの使い勝手や誤字問題を扱っているわけではないが)。

そして今、どうやら編集段階の電子化も進んで、冒頭のような間違いも生まれつつあるようなのだ。 はっきりいってコンピュータを使えば、こういう間違いは減るもんだと思っていた。 間違い単語を抽出するとまではいかないにしても、非常に頻度の低い名詞を検出するぐらいのことはできるし、他にも様々なチェックがほぼ自動でできる。 漢字入力や編集のみならず、効率よく校正を行う方法はあるのだ。 でもまだ、そこまではいっていないらしい。

ところで冒頭の本には、他にも同一人物へのインタビューが「だ・である調」だったのが「です・ます調」に変ってしまったり、 ベイカーという人物の名前が別の場所ではベーカーとなっていたり、 ごくごく基本的な間違いも見受けられた。 単にこの本に間違いが多い、という訳じゃなく、似たようなレベルの本は増えているように思える。 どうしてこんなことになってしまったのか原因はよく分からないが、近年はまれにみる出版ラッシュだそうで、 次から次へと出される書物をいちいちチェックしていられないとか、編集さんの不勉強が増えて間違いに気付かないとか、いろいろ事情があるのだろう。 かくいう僕もこの文の末尾のように、カット・アンド・ペーストを繰り返すうちに、句読点の数が合わなくなってしまうのだった。。 いやほんと、単に読み直してチェックすりゃーいいんだけども。

Nov-10-1997


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