書籍

コンピュータ関連の書籍は、その大半が解説本である。 つまり、ソフトやハードウェア、システム、処理系、その他の使い方やインストールなどを分かりやすく解説したような類の本だ。 解説本以外となると、せいぜいプログラマが仕事上の恨みつらみをぶつけたような暴露本とか、企業や事業の沿革を説明するビジネス書っぽい本とか、読み物的な本は非常に少ない。 さて解説本となると、これは流行に非常に敏感にならざるを得なくなる。 なんといっても書籍の場合、より多くの人に買ってもらわなければならないのだから、より多くの人が興味を持っていると思われるジャンルに集中するのは当然と言える。 たとえば7、8年ぐらい前には、C 言語の入門書が大人気だった。 ちょうどパソコンブームがあったのと、安い処理系が出たこともあって、せっかくだからと始める人が多かったのだ。 今ではシステムが複雑になりすぎたのと、処理系が高くなってしまったこと(これも MS の独占の影響か?)、やっぱり初心者にプログラミングなんてムリだよお、ってことで C 言語の本は下火となったように思う。 それに、今のトレンドはやはりなんといってもインターネットなのである。

インターネット関連の書籍の量ときたら、空前絶後とはこのことだというほどのものだ。 とにかく、インターネットにまつわるあらゆるトピックが書籍になっている。 インターネットとはなんぞや、という読み物から始まって、ホームページの作り方、HTML マニュアル、Java、JavaScript、CGI、Perl、それからとうとう Apache や FreeBSD のようなサーバ管理者しか読まないんじゃねーのって本までがガンガン出るようになった。 どのトピックも、それぞれ10種類は必ずあるぐらいの勢いだし、ホームページうんぬんとなればそれだけで100種類はあるだろう(オオゲサかもしれないが数えればホントにそれぐらいありそうだ)。

さて、これらの書籍をざっと眺めてみて思うことがひとつある。 それは「なぜ筆者はこれを書籍にしたのか。インターネットで web ページにして公開した方がいいんじゃないか」ということだ。 なんといっても web ページならば、作り始めてすぐに公開することができ、修正も変更も更新も非常に楽で早くできる。 書籍では、いったん出版してしまうと修正はまったくできない(一度買ったお客さんに買い直させる訳にはいかない)。 web ページは読者とのコミュニケーションも密だが、書籍ではアンケートハガキぐらいしか接点がない。 それに web ページなら、インターネット関連書籍によくあるリンク情報だってボタンにして置いておける。 紙に印刷された URL は、キーボードから入力してやらないといけないのだ。 web ページは他にも利点がたくさんある。 カラー画像も安価に提供できるし、動画や音声だって使える。 解説本が文字と絵で苦労して伝えようとしていることを、プログラムを使っていくらでも簡単かつ見栄えよく伝えられるはずだ。 第一、ホームページ制作ガイドは、まさにそのようなページを作るノウハウを解説しているはずだ。 その解説者自身が、そのようなテクニックを使って自分の著作をページにできないのって、すごい矛盾のように思えてならないのだ。

解説本はあれほどあるのにもかかわらず解説ページが少ない理由は、実は分かりきっている。 本は売れて儲けになるが、ページはいくら読まれても無料だからだ。 お金というのは非常に強力な動機なのである。 もし読むことに連動して集金するシステムがあれば、みんなとっくに紙の書物はやめにして、電子化された web ページに流れているだろう。 そっちの方が紙の書物よりコストが安いからだ(そして売るときは書籍と同じ値段で売る。浮いた分は丸儲けだうひひ)。 でも幸いなことに、そんなシステムはまだ一般的でない。 というわけで、書籍ばかりが増えていき、ページはださいままなのである。

まあ実は、筆者には本当にページを作るだけの技術がないのだ、という笑えないオチもありえなくもないところが、インターネットの奥の深いところかもしれない(なんのこっちゃ)。

Feb-13-1998


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